色あせた若き日のスケッチ   -   잡문 [雜文]/日本語

もうあと2,3年で70歲! しかし私は今も親友と電話で打ち合わせ, 早朝割引きの映畵を
見に出かける. ビデオでは物足りないから大型スクリ-ンで鑑覽しに行くと言えば,
息子は, "へぇ, 大層なご情熱でして"と皮肉を言う.
しかし誰が何と言おうと, 映畵は映畵館で, 大きな畵面を凝視しつつ, 何をしゃべるのか
分りもしない外國語のセリフに耳を傾け,  同時にすばやく字幕を讀む, といった動作を
行うことに依って本物の味を樂しめるのである.                                     

若い頃は夢中に映畵を見て步いたものだ.  映畵に關しては私よりずっと詳しい
幼馴染みと, 土曜日每, いや, ある時は週に2∼3回も開封館に出入りする事で
一個月分のサラリ-を劇場に納めた.

1950年代, 私達が若くてみずみずしかった時代, あの時代は實に良い映畵が洪水のように
わが國へ流れこんだ.  私達は, その中の一つでも逃したら大變な事になるとでも
言わんばかりに, せっせと映畵館へ出向いた.  

良い映畵を見た日は, その餘韻を樂しむ爲め行きつけの喫茶店に座を移す.  
當時の喫茶店は男性達の溜り場で, 若い女性が入るにはまず勇氣が要る.  
私達は互いに背中を押し合い, 先に入るのをしぶった.  
隅っこに座を占め, テ-ブルの上のコ-ヒ-カップを兩手で包むと徐徐に廣がる
コ-ヒ-香りが二人を限りない幸せに醉わせる....

その日も土曜日だった. いつものように仕事が先に終る私の方で彼女の事務室へ
向うため歸り支度をする私を, 同僚男性社員が呼び止めた. 自分の親友を紹介しようと
約束をして置いたと言うのだった.  
たまに事務室へ現われる彼の友人をカッコ良いと言った時, じゃ紹介しようかと
冗談を言い合った事があるが, こんなに勝手に事を運ぶとは思いもしなかった.
暫し迷ったあげく, 會ってあいさつだけ交し, 急ぐと彼女の退勤に間に合うだろうと
考え, 一應同僚に付いて行った.

しかしながら約束場所がたまたま食堂だったので仕方なく晝飯を取ることになり,
食事のあい間の話題が映畵の方に移るや, 映畵に目のない私は彼と意氣投合し,
一緖に映畵觀覽という事になってしまった.
待ってる彼女に申しわけないとは思ったが, そこはまあ14歲の時からの親友だもの

ってくれるだろうと, 自分の好きなように考え, 彼が求めた高い暗票で映畵館へ入った.  
次の日の日曜日にも, 私は親友をたずねて事の成り行きを說明し謝まるべきを,
彼と落ち合い, また映畵觀覽をした.  それから半年後, 私はその男と結婚した.

以後40年間, 仲間の集まりなどで話が映畵になる度に, 彼女は私をにらみ返しながら,
こう吐き出す.
"私どうしてあいつをそのままにして置いたかしら. ねぇ, 土曜日になると決まって
あいつが私の事務室に來ることになってたので一時間も待ったんだ.
いやに遲いので會社へ電話したら誰も出ない. 獨りで映畵見に行くのもそうだし,
久しぶりに早く歸り, 親孝行でもしようかとバスに乘ったわけ. そして何氣なく
外を眺めたら, まあ, あいつめ伊達な男と竝んで微笑みながら話てるじゃない.
カッとしてバスから飛び降りなかったのが今も不思議でならないよ."       -終- 

                                                                                 (さる社報に揭載 1992年)

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